🚵♂️湘南平の坂を登りきれ──60代の挑戦と“とほほ”の攻略法
「時速60キロでクルマを抜いた翌日──
僕は、かつて“地獄”と呼んだ坂に向かった。」
前日、自転車で国道16号をぶっ飛ばし、思いもよらずクルマを追い抜いた。
久しぶりに燃えた僕の中の「挑戦スイッチ」が入ったのだ。
次なるターゲットは……
湘南海岸の名所・湘南平(しょうなんだいら)。
🌊江の島から134号線へ──風とともに走る
その日は朝から、境川を下って江の島へ。
波の音を背にしながら、134号線を西へと進んだ。
茅ヶ崎、辻堂、湘南大橋──
片側2車線のこの海沿いの道は、実に走りやすい。
松林の向こうに見えるのは、きらめく湘南の海。
信号も少なく、道もほぼフラット。自転車で走るには最高のコースだ。
……ただひとつだけ難点があるとすれば、
大型トラックの猛スピード。
「国道1号線の比じゃないな……」と思いながら、ハンドルを強く握った。
🏔湘南平──それは“地獄”の坂道だった
湘南大橋を越え、平塚市内に入ると、
「花水橋」を右折し、いよいよ湘南平へ向かう。
自宅からここまで、ちょうど40キロ。
湘南平は標高180mの丘のような山で、
展望台からは湘南の海が一望できる。
だが、僕にとってはただの観光地ではない。
それは──
大学時代、地獄の坂道トレーニングの舞台だった。
陸上部時代、駅伝を夢見て所属していた長距離ブロック。
大学から湘南平までは約10キロ、そこをジョギングで移動し、
あの坂を3〜5本、死ぬ気で走らされた。
下手すれば吐く。
でも帰りもまたジョギング。
今思えば、若さって恐ろしい。
🚴♂️30代の挑戦──アルミロードでの苦闘
30代になって、自転車で再びこの坂に挑んだ。
当時乗っていたのは、11kgほどのアルミロードバイク。
それでも最初は、坂の途中にある待避所で立ち止まりながら、
何とか登りきるのが精一杯。
とにかくキツいのが、500mほど続く直線区間。
平均勾配9.1%、ここは脚力勝負。
すごい人たちは、この坂を休まずに何往復もしていた。
同じ人間とは思えなかった。
👨👦60代の今、息子と再挑戦
そして先日、息子がカーボン製のロードバイクを購入。
それを借りて、60代の僕が再びあの坂に挑むことにした。
「今の自分でも登れるかも──」
そんな淡い期待は、500m地点で崩れ去る。
止まった。
脚が回らない。
心拍が上がりすぎて、目の前が白くなる。
数度の挑戦でも、同じ結果だった。
坂道は、年齢を誤魔化さない。
🧠逆転の発想──“とほほ”の作戦変更
でも僕はあきらめなかった。
ある日、作戦を変えてみた。
「最初から飛ばさず、あえてスピードを抑える。
エネルギーを“温存”して、最後まで持たせよう。」
そしてもうひとつ、禁じ手に近いが──
坂を“ジグザグ”に登る作戦。
湘南平の坂は広くて、交通量も少ない。
ジグザグに走れば、勾配がやや緩やかになる。
🎉足をつかずに、登頂成功!
呼吸を整え、スピードを抑え、ジグザグに──
ひたすら心を落ち着けて、ペダルを踏み続けた。
そしてついに……
足をつかずに登頂達成!!
ただの直線走行では無理だったかもしれない。
でも──
「歳をとった今だからこそ、無理をせず登る工夫ができた」
そんな達成感が、胸にじわっと広がった。
🧓年を重ねるって、そういうことだよね
かつては、「一気に登りきること」が正義だった。
でも今は、ゆっくりでも登りきれたことが誇らしい。
若い頃のように無茶はできないけれど、
挑戦を工夫に変えて、夢を叶えることはできる。
歳をとるって、そういうことなんだよね。
とほほ……じゃなくて、「とほほんの達成感」でした。
🚴♂️次回予告:箱根まで鈴廣のかまぼこを買いに──140kmライド!
実はこのあと、僕は「鈴廣のかまぼこ」を買うために、
箱根まで自転車で往復140キロを走った。
その道中には、峠も、笑いも、そして脚の限界もあった──
次回、「かまぼこと140キロと僕」編、お楽しみに!
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